魔法はとけない

夢から醒めてしまわぬようにいつまでも

戸塚祥太『ジョーダンバッドが鳴っている』

私が戸塚さんを認識したとき、もうすでに戸塚さんは人気Jr.だったように思う。具体的にいつとは覚えていないけれど、少クラやアイドル誌では頻繁に顔を見たし、いつの間にか知っていたという感じだったように思う。

 

だけどそれから私にとっての戸塚さんは、認識はしているけれどよくは知らない人という感じだった。A.B.C-Zのパフォーマンスは大好きだし、テレビや雑誌に出ていればチェックしたりもしていたけれど、戸塚さんのことを知っているとは言い難かった。戸塚さんはとりわけ、少し見聞きしたぐらいで「とっつーのことをわかっている」と言うことは許されないような雰囲気があった。

 

そんな程度にしか戸塚さんを知らない私でも耳にする奇行の数々。あんなに美しいのに。やはり人並み外れた何かがある人間はどこかおかしいのか。戸塚さんを知りたい…!となってのこの本である。

 

ジョーダンバットが鳴っている

ジョーダンバットが鳴っている

 

 

この本を読んだ素直な感想は、本当に誠実な人なんだなということだった。ここに書かれていることは、本人にとっては恥ずかしいような過去、そして現在進行形のもがきの日々である。

 

例えばMステ事件のとき、なぜあんなことをしたのかという経緯やそのときの心境が、彼自身の言葉で詳細に綴られていた。これ、私だったら書けないなと思った。戸塚さんは正直にMステに出られるということに舞い上がっていたというような旨を綴っていたが、そんな若手芸人みたいなこと、CDデビューも果たしているキラキラしたアイドルが言えるだろうか?プライドが邪魔をして言えないのが普通なような気がするのだ。だけど戸塚さんは取り繕うこともなく、あくまで自然体に、事実としての当時の心境を吐露している。あの文章を読むだけで、この人を応援すると楽しいだろうなということがわかるようだった。

 

この本の中に出てくるのはデビューしてからの話だけではなく、ジャニーズJr.時代の話もある。これが私は本当に興味深かった。私は心配性で臆病な性格な為、デビュー出来るかどうかわからない中ジャニーズJr.を続ける人たちのことを、まるで別の精神構造の人たちだと思っていた。それは羨望であり憧れでもあるのだけれど、私なら安定した生活や未来を選びそうなので、自分のやりたいことや可能性を信じて突き進めることは本当にすごいなと思うし、私には理解もできないほどに強いんだろうなと思っていた。だけど、この本の中で綴られていた戸塚さんは、決して強くはなかったし、自分の未来だけを信じて突き進んでいるわけではなかった。仕事がなくなる恐怖、取り残されることへの不安、未来への迷い。それが隠すことなく素直に綴られていて、私と同じ人間なんだなと少し安心した。そして私が彼らにこんなにも惹かれて憧れるのは、私と同じ人間である彼らが、不安や恐怖に目を背けることなく突き進んでいく先にあるものを、ステージの上で見せてくれるからだとわかった。

 

すごく印象的な章がある。Hey!Say!JUMPの薮宏太くんについて書かれた章だ。私は薮くんを応援しているので、これを読むことをすごく楽しみにしていた。薮くんと戸塚さんの関係性が大好きなのだ。そして、戸塚さんの目線で書かれた二人の関係性は、当たり前のことではあるけれど私の目線で見た二人の関係性より深く、温かく、優しく、強かった。私は薮くんの性格がすごく好きで、いつもそれを「カラッとしてる」と表現するんだけど、戸塚さん目線の薮くんはまさしくカラッとしていて、あのくしゃっとした笑顔が浮かぶようだった。後輩で年下でありながら自分より一歩前を歩く薮くんに対して、妬みや嫉みを抱くことなく友達として純粋に接し、戦友として誰よりも応援する戸塚さんは本当に強くて真っ直ぐな人だし、それを理解して変わらずにいられる薮くんも本当に強くて優しい人なんだなと思う。

 

置いて行かれるより、置いて行く方が辛いことがあるというようなことを戸塚さんは書いていた。ジャニーズJr.という枠組みの中で築かれた関係について、端的に表した言葉だと思う。だけど、一生懸命にがむしゃらに走った青春、その中で出会い共に走った仲間の存在は、戸塚さんの言葉を借りるなら、まさしく「希望そのもの」だろう。

 

そして、私がものすごくいいなと思ったのは、戸塚さんが好きなものやことに対して真っ直ぐなことだ。気取らず、見栄を張らず、好きなものを好きだと言う。それは本当に難しい。だけど戸塚さんは怖がらず好きと言い続けることで、伊坂さんや阿部さんと対談したりしてるんだから、好きの力は大きい。特に伊坂さんは私も大好きなので、戸塚さんが語る伊坂さんの素晴らしさについては大きく頷きながら読んでいた。私も伊坂作品はほぼ網羅しているけれど、戸塚さんの熱い思いに押されて再読したくなったし、きっと読書習慣のない若いファンの方の中にも、とっつーがそこまで言うなら読んでみようと思った人も多いだろう。自分の思いを叶えるだけでなく、誰かの思いや行動を変えることがある。それも好きの力であり、アイドルという職業につくものの力だろう。彼が言うなら!と思えてしまうところは、私たちアイドルを愛する人間が持つ、好きの力なんだろうけれど。やっぱり好きは偉大。

 

この本を読んで以降、戸塚さんがテレビや雑誌に出ていると以前より注目してしまう私がいる。早く戸塚さんが世界に見つかって欲しい。もっとABC-Zのパフォーマンスがテレビで見たい。それは私が少しだけ、きっと本当に少しだけだけど、戸塚さんという人間を知れたからだと思う。

 

そんな感想をブログに書こうと思って、約2週間も経ってしまった。誰からも〆切を迫られず、好きなタイミングに好きなように書く。これでもなかなか筆が進まないときがある。改めてこれをコンスタントに続けた戸塚さんに敬意。書くことは難しいけれど、楽しい。